スペイン広場 – 作曲過程

– 2026/2/22

一つ目の話題は、スペインのテーマで作曲することについて。
二つ目の話題は、この曲の作曲上の特徴について。

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2025/6/14 : 作曲完
2026/2/22 : 公開 ⇒ Plaza de España

スペインといえばギターの王国。しかも私はスペインには行ったことがありません。そんな私がスペインをテーマにしたギター曲を書くのは大きな遠慮がありました。それでも書いてみたい。どうすればいいのか? これがこの作曲の悩みでした。

(実はスペインについての曲はこれが2曲目なのですが、未発表の1曲目はちょっと事情があって悩まずに作ってしまいました。そのことについてはいつかまた書くかもしれません。)

私のスペインの印象は、子供の頃聞いたシャブリエの狂詩曲「スペイン」と、リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」で形作られました。輝きと豪華さ。父はこういう曲が好きで、子供の私も休日にこれらを聞くのが好きでした。

Frankfurt Radio Symphony (hr-Sinfonieorchester) による演奏

Chabrier- España ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Alain Altinoglu – YouTube ↗
Rimskij-Korsakow- Capriccio espagnol ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Pablo Heras-Casado – YouTube ↗

しかしギターを弾くようになってから知ったスペインの音楽は、キリスト教的音楽とイスラームの音楽が入り混じった複雑な世界で、その音は憂いで色付けされた深く美しいものでした。いったいどちらが本当なのか? もちろん答えは決まっています。シャブリエはフランス人、リムスキー=コルサコフはロシア人ですから。彼らは太陽輝く南国スペインへのあこがれの気持ちを持って、彼らの理想のスペインを描いたのではないかと思います。

さて悩みの話に戻ります。私がスペインについての曲を書いていいのか? でした。しかし、もし、スペインを表現するのではなく、スペインについての私のあこがれの気持ちを曲にするのであれば、それは私の内面の表現ですから許されてもいいかもしれない。

ではどんな曲を作ればいいのか? 私にタレガやグラナドスのような曲が作れるかというと、それはとても無理です。身についている音楽性が違っていて、私の中からはああいう曲が出てくる気がしません。私の中にあるのはシャブリエやリムスキー=コルサコフのような豪華で明るいスペインなのだと気が付きました。だからあまり考えすぎず、自分の中にある姿を曲にして、自分で弾いて楽しもう。これが私の悩みへの解でした。

よし! いよいよ作曲開始です。以前、特にテーマを決めずに気分だけで弾いて録音しておいたものから、以下を発掘しました。

以前弾いておいた演奏

私はこういう切れ端のような録音をいくつもためてあります。こういうのはたいがい休日や食後にソファーに座って弾いたもので、気分だけで何のテーマもなしに弾いたものです。その時点ではテーマがないので自分でも何を弾いているのかわかっていません。しかし曲の方向性が決まってくると、「あ、これで作ろうかな」という気になるものが見つかることがあります。今回は出だしの部分が「豪華で明るいスペイン」に合うと思ったので、以下のように少し変えて前奏にすることにしました。

前奏

さて、この続きを作るにはもっと具体的な曲のイメージが欲しいです。そういう時は写真を探します。でもスペインのどこの?

そこで、アルベニスのギター編曲された曲を聞いてみました。「グラナダ」「コルドバ」「セヴィリア」。この中ではセヴィリアがとても明るい曲でした。アルベニスはスペイン人ですから、セヴィリアが明るい印象の町であることは間違いないでしょう。そういうわけで写真サイトで “Sevilla” と入れて検索しました。すると沢山出てきたのがスペイン広場でした。

スペインの町の名前が付いたアルベニスのピアノ曲。Julian Bream によるギター演奏

Julian Bream | Granada | Isaac Albéniz – YouTube ↗
Julian Bream | Córdoba | Isaac Albéniz – YouTube ↗
Julian Bream | Sevilla | Isaac Albéniz – YouTube ↗
ああ、なんて美しい曲、なんて美しい演奏! 私のと比べないでください 🙂

かつて万国博覧会会場として作られたこのスペイン広場は、歴史を感じさせる場所というよりは来訪者を楽しませる場所として作られたのだと思います。だから「壮麗豪華」というよりも「誰でも来られて楽しい」場所に見えます。最終的にそれがこの曲のテーマとなりました。

さて、スペイン広場の写真を頭に入れながら昼寝を楽しんでいたら、前奏に続くメロディーが浮かんできました。ありきたりな感じですが、私が楽しく弾けそうです。

昼寝中に思いついたメロディー

ところがです。前奏は3拍子、このメロディーは4拍子です。これはまずい。メロディーを3拍子にするか、前奏を4拍子にするか? 拍子を合わせる努力を少々したのですが、いったん心の中に浮かんできたフレーズを後から変えるのは難しい。努力の方向を変えて、異なる2つのリズムを1曲に組み合わせてみることにしました。その結果が以下の最終譜です。

1フレーズ目

前奏は3拍子で、メロディーが始まると4拍子。上の譜には3拍子リズムのラインをオレンジ色で、4拍子メロディーのラインを青で印をつけました。緑色に囲った小節ではメロディーの後ろ3拍に前奏と同じリズムを重ねています。小節の構成も、メロディー中心の4拍子が4小節、続いてリズム中心の3拍子が2小節。合計6小節で1フレーズという、ちょっと変わったものになりました。

続く2番、3番目のフレーズも同様の構成です。

2,3フレーズ目

ここでは4拍子と3拍子が重なる緑枠の小節で3拍子側の音の方を高くして、リズム側の存在を強調させました。

以上のような作り方をしたのですが、これは「変な」曲ではないのか? 自分としては思いついたリズムとメロディーが組み合わせられたし、楽しく弾けるのでOKなのですが、こういう譜面を見たことがありません。自分がいいと思っているだけで、変な曲なのかもしれません。

しかし居間で何度も弾いているのに誰も「変だ」と言いません。ということは変じゃないのかな? ということで、これでおおむね作曲終了です。

こんな悩みは聞く人にはどうでもいいことですが、作曲する側はいろいろ考えてしまいます。


最終的な演奏と楽譜は以下です。

スペイン広場 五線譜↗

▲ 私の作曲過程紹介