ハーモニーを工夫する

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2025/8/27

メロディーを曲にする」では、メロディー・ハーモニー・ベース・リズムの順で曲を作っていく過程を説明しましたが、そこで書いたハーモニーの作り方は単純なものでした。

ここではハーモニーについてさらに工夫してきたことを書いてみます。

ここで話す話題は大きく二つあります。一つは「メロディーに追従させるハーモニー」、もう一つは「曲を進めるハーモニー」です。まずはメロディーに追従させるハーモニーの話をします。

メロディーに追従させるハーモニーの場合は、ベースを除けばメロディーを含む2音で弾くことが多いです。それはメロディーを主役にするために、メロディー以外の音数を少なめにしたいからです。そしてメロディーのほうを高い音にして目立たせるので、もう一音はメロディーから何度下の音になるかの選択です。

以下は3度下のハーモニーをつけた例です。演奏する弦でいうと、メロディーを弾いた弦の一つ下ということになります。3度のハーモニー部分に青と緑で印をつけました。

Oh! Italia ; 1st phrase

次は6度下のハーモニーの例です。この場合はメロディーを弾く弦の二つ下の弦を弾くことになります。

Alley Walk – Alley Illusion ; 2nd phrase

さらに次は4度下のハーモニーの例です。これはメロディーの一つ下の弦を弾くことになります。

Garden of Plum Blossom ; 1st phrase

紫色で囲った音は4度のハーモニーではないですが、これはひとつ前の音に対してメロディーだけをずらしたもので、同じハーモニーが鳴り続けている中でメロディーだけが動いたという感覚で弾いています。

私が実際に作曲するときは上記のように、一つのフレーズ内では同じ音程差のハーモニーにそろえて作ることが多いです。これは意図してやっているというよりは自然にそう作ってしまうのですが、そこには音程差が醸し出すなにがしかの雰囲気があって、少なくとも同じフレーズの中ではその雰囲気を維持したいと感じているからだと思います。

3度下のハーモニーは、私の感覚では最もオーソドックスな西洋音楽の雰囲気です。だから普通に作ろうとすると3度のハーモニーを選んでいます。

6度下のハーモニーは音に深みが出て、何かしら懐かしさや、引きずるような重さが感じられるので、そういう印象を残したい時に使っています。

4度下のハーモニーは、私も正体がわかっていません。実際に多用したのは Garden of Plum Blossom の1曲だけです。しかしこの曲を作り始めた時、このハーモニーで鳴らした瞬間に雰囲気が東洋風になりました。西洋音楽的に見れば「普通ではない」ハーモニーで、そのせいで東洋風に聞こえるのかもしれません。

なお、5度下のハーモニーは意識して使ったことはありません。弾いてみるとまた独特の響きになります。いつか使ってみるかもしれません。


もう一つの話題は、曲を進めるハーモニーです。メロディーに追従するハーモニーの方はメロディーが主役で、それをリッチな音にするためにハーモニーを付加している感覚ですが、こちらは多数の弦を鳴らしてコードで曲を押し進めていく感覚です。以下はそういう例です。そこら中に縦に4つの音が並んでいるので、コード演奏が主役だということが見てもわかります。

Mount Adatara ; 1st phrase

もう一つ例を挙げます。

Lunch at Café ; Coda

こういうコードで押していく曲は、演奏が簡単でギターを思いっきり鳴らすことができるので、弾いていて気持ちがいいです。

ここで紹介した「メロディーに追従させるハーモニー」と「曲を進めるハーモニー」は、とても違う曲の作り方だと思います。何度のハーモニーにするかとも合わせて、作曲上の選択肢になります。


ここまでは、曲のあるひとつのフレーズの中に閉じた話をしていましたが、曲全体でいえばそれらを組み合わせていくことになります。

以下は、例に挙げた Alley Walk – Alley Illusion の全曲です。最初は3度のハーモニーで現実の散歩を表現していますが、途中から6度のハーモニーにで現実から幻想への移行し、中間部ではさらにリズムと調を変えて幻影を表現しますが、ここは響きが美しい3度のハーモニーです。最後は D.C. で現実に戻り、またいつのまにか幻想に引きずり込まれていきます。

Alley Walk – Alley Illusion: 五線譜 ↗️

もう一つは Mount Adatara の例です。最初は同時に4つの弦を鳴らすコードを拍に合わせて毎小節2回ずつ入れて曲を押し進めて雄大な山の表現をしていますが、中間部はアルペジオで静かな湖を表現しています。

Mount Adtara: 五線譜 ↗️

表現したいものに合わせてハーモニーを変えるというのは楽しい工夫です。


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