銀のすすき 金の月 – 作曲過程

作曲過程というよりは、英語と日本語の違い、日本語の歌詞とメロディーの関係の考察です。

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– 2023/10/15

2021/8/12 : 作曲完
2023/10/3 : 公開 ⇒銀のすすき 金の月 の記事へ

この曲を作るときに、最初に決めたことは「月とすすきの曲を作ろう」「日本の音階を使おう」「日本らしい歌詞をつけてみよう」の3つでした。そして最初に歌詞を日本語で作ってみました。

河原すすきの金の穂に
月の光の銀の粉。

歌詞を書いて作曲するのは初めてですが、すぐに最初のフレーズが出来上がりました。

最初に作ったフレーズ

さてこの後が続きません。3つの問題がありました。

一つ目は、この後の歌詞が思いつかなかったことです。私の頭の中にあった情景は、この二行がすべてだったので、もうこれ以上思いつかなくなってしまいました。これでは1曲作るには短すぎます。

二つ目は月とすすきの色です。低いところにかかる月は金色ですが、私の頭の中では、月は天高くにあり銀色に光っていました。逆にすすきは近くにありますから金色に近い色に見えます。だからすすきが金、月が銀だったのです。ところが調べてみるとすすきの英語名は ‘Silver Grass’。しかもススキと月が一緒に写真に納まるのは低い月なので、見つかる写真ではすべて月が金色。

しかしこの二つは作曲とはあまり関係ない悩みです。でも三つ目は作曲に関する問題でした。それは歌詞に合わせて歌うと、自然とメロディーが決まってしまうということです。これは日本語の特徴のせいだということに気が付きました。

メロディーはリズムと音程でできているのですが、まずリズムについてです。英語は発音の長さについて自由であり、長さに意味を持たせている言語です。たとえば “Good” は “Good Morning.” の時は短く発音しますし、素晴らしいものを見た時には “Goooood!” と長く発音します。もし “Goooood Morning.” といわれたら、普通の挨拶とは別のことを言いたいのだと感じます。

一方、日本語は非常に正確なリズムで話し、長さを変えることはありません。楽譜で言うならばすべて8分音符になります。同じ音が2回続く長音の場合は4分音符、促音のように音をスキップする場合は8分休符。日本語で長さを決めずに発音するのは、一区切りの意味が終わる最後の所だけです。上の楽譜で2分音符になっているところです。実際には2分音符の長さが必要なのではなく、次の一区切りを話したくなるまでの自由な長さです。
もちろん曲の中では、どの音の長さも自由に変えられますが、ふつうに日本語を読む場合のリズムは固定的です。

そして音程について。英語は強弱アクセントの言語です。たとえば “Body” では “o” を強く発声します。”y” の方を強くしてしまったら英語でないように聞こえます。

一方日本語は高低アクセントの言語で、高低を間違えると意味が伝わらないことさえあります。「あし」は「あ」を高い音程で、「し」をそれより低い音程で話せば「葦」の意味になりますが、高低を逆にすると「足」の意味になります。音楽のように正確な音程がきまっているわけではないので、歌にする際はその高低差を大きくしたり小さくしたりはできますが、高低を逆にしてしまうと日本語としては不自然になります。そういう日本の曲もたくさんありますが、日本語として自然とは言えません。

そういうわけで日本語は、文字として書いてある物を普通の日本語として読むだけで、リズムと音程がだいたい決まってしまいます。さらに日本の音階は5音音階で、選べる音程が少ないので、メロディーがあっという間にできてしまったわけです。これは普通に考えればいいことだと思うのですが、作詞ではなく作曲が楽しみの私には、これではつまりません。(笑)

結局、題名は金と銀を入れ替え、歌詞は捨てて、素直に写真のイメージに合わせてもう一度弾きなおしました。もう歌詞はいらないので続きのフレーズもすぐにできました。

作曲「過程」というほどの時間もかからず、わずかな日数で作ってしまいました。日本人が日本の音階で日本のテーマで作曲すると、実に自然に作れることがわかりました。「簡単に」というよりも「自然に」です。

スペインのギター曲は本当に魅力的で、私にあんな素敵な曲が作るのかと思いますが、スペインの人にとっては自然にでてくる曲なのかもしれません。

逆にスペインの人にはこういう日本風の曲は作れないのかもしれません。もしそうなら、この曲も世界の中で見ればちょっとの意味があるかもしれません。


最終的なと演奏と楽譜は以下です。

銀のすすき 金の月 五線譜

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