路地の幻影

2022-6-30

初夏の路地を歩く。

まぶしい壁と緑。強い日光で、街は消毒されてしまったかのように清潔で静寂だ。こんな真昼間に歩く人は多くはない。まだ暑さに慣れていない私はほどなく、暑さと眩しさでなぜ歩いているのかわからなくなってくる。

角を曲がるごとに路地は新しい景色を見せてくれる。家と家のはざまで切り取られた遠景、突き当りの家の前に咲く花、初めて見るはずなのになつかしい景色。それらは実際の映像というより、まぶしさで眩まされた私の頭に、夢の中の景色のような印象だけを残していく。

後日また同じ景色を見たくて探してみても、見つからないことがある。それらは幻影のように、私の世界から消えてしまったのだ。そして今日もまた、そういう幻影が欲しくて路地を歩いている。

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