宮殿のバラ

2022-5-1

「ベルサイユのばら」というマンガがありました。壮麗な宮殿と派手やかなバラは、私の世代の日本人にとって西洋絢爛美の象徴です。


バラ用の園芸道具が普及して、いまではバラも町なかでよく見られるようになりましたが、遠くから見てもわかる強烈な色の光は日本の風景の中でとびぬけて違う景色を見せます。日本の花は初夏のぎらぎらした光を和らげてみせますが、バラはその眩しい光に更に色を乗せて跳ね返してきます。

ネットでバラの写真を探して気が付いたのですが、バラだけを集めた庭園の写真は日本のサイトに多く、海外のサイトでは他の花に混じってバラが植えられているものが多いです。バラだけを集めるのは、バラが日本の他の花となじまないせいなのかもしれません。しかしそれだけに、やはりバラは西洋の象徴なのです。

そういうバラを曲にしようと考えたのはもう3年以上前のことだったと思いますが、ある理由があってバラだけをテーマにした曲がうまく作れませんでした。何度も失敗した末に、バラと宮殿を組み合わせることでやっと完成しました。

ちょっとうるさい曲かもしれませんが、それはこの曲を作ったのが真冬で、夏が待ち遠しかったからです。夏のぎらぎらした光のように弦をいっぱい響かしてみたくて、そういう気持ちもこの曲の完成に役立ったようです。

バラの曲を作るのは難しかったと書きましたが、この曲には姉妹曲が二つあります。一つは宮殿だけの曲、もう一つはバラだけの曲です。しかしその二つを合わせてこの曲が出来たのではありません。バラのもう一つの印象を書いたのがバラだけの曲です。そしてバラと宮殿を組み合わせて作った様々なフレーズを、バラに似合うものと宮殿に似合うものを分けて構成し直したのがこの曲と宮殿の曲です。こういう苦労とアイデアは本当に作曲の楽しさです。

残りの二曲はいつかまた発表したいと思います。

二曲とも発表済となりました。

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