とり残されたバラ
2022-12-10
バラの花には、人の手で作られたものの悲しさがあります。自分がありたかった姿ではなく、人間が望む姿に作られたからです。では、一人取り残されて、人間に見てもらえなくなったバラは何を思うのか。
悲しい曲は作らないことにしていましたが、一度悲しいバラを書かないといけない理由がありました。
遠目にはなんと華やかなことか。その美しさゆえに必ず近づくことになり、そしてそこに必ず悲しさを見つけることになります。
バラの曲は何度も作ろうとして、何度も失敗しました。出だしは豪華な音で勢いよく始めても、途中から必ず悲しい音になっていってしまうのです。豪華なバラの曲を作るためには、バラの悲しさだけを取り外さないといけません。それがこの曲です。
この曲を作ったので、もうバラの悲しさは描かなくなりました。そして「宮殿のバラ」ではやっと豪華なバラを描くことができました。なぜ宮殿とバラなのかというと、大きな建物を視野に入れようとすれば、バラに近づかなくて済むからです。
悲しい曲を居間で弾くのは嫌だったので、コードはすべてメジャーコードにして、かわりに音の数を減らし、せめて「悲しい」を「寂しい」に変えました。こんな理由で作った曲を公開するのはどういうものかとも思ったのですが、こういうことも作曲の一面だと思いアップすることにしました。